警察庁は3月3日、平成27年のインターネットバンキング不正送金(IB不正送金)の被害状況を公表しました。平成27年のIB不正送金被害は1,495件・約30億7300万円となり、過去最悪の被害額だった平成26年の約29億1000万円を上回りました。
特徴としては、法人IBの被害が前年の約10億8千万円から約14億6千万円へと増加したほか、業態別では、信金・信組の被害額が前年の約1億2千万円から約9億4千万円へと急増しています。また、JAバンクや労金は25年と26年に被害が発生していませんでしたが、約8700万円の被害が発生しました。
都銀や地銀では被害額が減少しており、攻撃者のターゲットがより下位業態に移ってきていると考えられます。
以下に、警察庁のニュースリリースを引用します。
平成27年中のインターネットバンキングに係る不正送金事犯の発生状況等について
広報資料
警察庁
2016年3月3日
1 平成27年中の発生状況
(1) 発生件数及び被害額1,495件約30億7300万円
期間 | 件数 | 被害額 | 実被害額 |
---|---|---|---|
平成27年 | 1,495件 | 約30億7300万円 | 約26億4600万円 |
平成26年 | 1,876件 | 約29億1000万円 | 約24億3600万円 |
平成25年 | 1,315件 | 約14億600万円 | 約13億3000万円 |
- 上記発生件数及び被害額については、ウイルスやフィッシングによると認められるものを集計
- 被害額・・・犯人が送金処理を行ったすべての額
- 実被害額・・・「被害額」から金融機関が不正送金を阻止した額を差し引いた実質的な被害額
(2) 特徴
- 法人口座被害の増加により被害額が過去最悪を記録
- スマートフォン等にSMS(ショート・メッセージ・サービス)を送信して偽サイトに誘導するフィッシングを初めて確認
- 信金・信組、農協・労金に被害が拡大(被害額の内訳は、都銀等47.1%、地銀19.5%、信金・信組30.6%、農協・労金2.8%)
- 特に信用金庫の法人口座被害が急増
- 不正送金先口座は、中国人名義のものが約6割
- 被害口座名義人の多くがセキュリティ対策を未実施
- ただし、法人では17%がセキュリティ対策実施(電子証明書利用)
2 取組状況
(1) 口座売買等の関連事件97事件・160人を検挙
(2) 不正送金事犯に係る犯罪インフラ対策の推進
- 中継サーバ事業者の一斉取締り
- ネット専業銀行に対する送金先口座対策要請
(3) 不正送金ウイルス対策による被害拡大防止措置の実施
- 外国捜査機関と連携したウイルス通信先サーバの停止
- ウイルス無害化措置による被害拡大防止対策の実施
3 今後の取組
(1) 事件の徹底検挙及び口座凍結等のインフラ対策の推進
(2) 新たな手口等被害防止に直結する情報の金融機関等への提供
(3) 金融機関・利用者によるセキュリティ対策高度化の働き掛け
(以下、省略)