三菱東京UFJ銀行と日立製作所は8月22日、シンガポールにおいて、ブロックチェーン技術を用いた小切手の電子化について実証実験を開始すると発表した。
実証実験では、電子小切手の振り出しや譲渡、取り立てを行うシステムを両社が共同で開発し、三菱東京UFJ銀行が小切手の発行・決済業務を行い、日立グループの複数拠点で小切手の受け取りや取り立ての実験を行う。
シンガポールでは、金融監督当局のMAS主導で、FinTechサービスの実用化に向けた試験的な枠組み(Regulatory Sandbox)制度が進められている。今回の実証実験は、このSandbox制度を活用して、ブロックチェーン技術を活用した電子小切手の実用化に向けた課題抽出を行う。
両社ではブロックチェーン技術の活用した電子小切手を実現することで、金融機関における小切手の仲介業務の自動化や取引記録の改ざん防止、小切手決済の迅速化を狙うほか、将来的には金融以外の業界における決済やサプライチェーン・ファイナンスへの応用を目指すという。
ブロックチェーンを用いた具体的な実証実験については、この数ヶ月で様々なものが発表されている。三菱東京UFJ銀行の「MUFGコイン」のほか、オリックス銀行や静岡銀行などの「貿易金融」、みずほ銀行と富士通の「証券のポストトレード業務」などが代表的な事例だ。
先週にはSBIと静岡銀行が、ブロックチェーンを用いた「国内外の為替サービス基盤」を開発することも発表している。
今回の三菱東京UFJ銀行と日立の事例も、ブロックチェーン技術を用いた代表的な事例の1つになりそうだ。
以下に、三菱東京UFJ銀行のニュースリリースを引用する。
日立と三菱東京UFJ銀行が、シンガポールにおいて小切手の電子化を対象としたブロックチェーン技術活用の実証実験を開始
株式会社日立製作所
株式会社三菱東京UFJ銀行
2016年8月22日
株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原敏昭/以下、日立)と株式会社三菱東京UFJ銀行(頭取:小山田隆/以下、三菱東京UFJ銀行)は、このたび、シンガポール共和国(以下、シンガポール)において、小切手の電子化を対象としたブロックチェーン技術*1活用の実証実験を開始します。具体的には、ブロックチェーン技術を用いて電子小切手の振り出しや譲渡、取り立てを行うシステムを共同で開発し、三菱東京UFJ銀行が当該小切手の発行・決済を行い、日立グループの複数拠点で小切手の受け取りや取り立てを実施します。
両社は、本実証実験を通じて、技術・セキュリティ・業務・法制度など、さまざまな観点からブロックチェーン技術の活用における課題を抽出し、小切手の電子化をはじめとする新たな金融IT(FinTech)*2サービスの実現をめざします。
近年、ブロックチェーン技術を活用した新しい金融サービスの提供、金融サービスの効率化に向けた取り組みが本格化しています。ブロックチェーン技術は、金融決済などの取引に関する情報をネットワーク上の複数のコンピュータにて共有する技術で、情報の改ざんが極めて難しいとされています。ブロックチェーン技術の応用により、システム投資コストを低減しつつセキュリティを確保した利便性の高い金融サービスの実現が期待されています。
シンガポールでは、金融監督当局主導で、FinTechサービスの発展に向けた枠組み(RegulatorySandbox)のガイドライン策定について市中協議文書が公表されています。今回の実証実験は、アジア地域における日立と三菱東京UFJ銀行の協創の取り組みの一つとして、この枠組みを活用し、日立のアジア地域統括会社である日立アジア社と三菱東京UFJ銀行が中心となり開発したシステム上で、ブロックチェーン技術を活用した電子小切手の発行・決済、ならびに実用化に向けた課題抽出を行うものです。電子小切手におけるブロックチェーン技術の活用を実現することで、金融機関における小切手の仲介業務の自動化や取引記録の改ざん防止、小切手決済の迅速化が可能になるほか、将来的には金融以外の業界における決済やサプライチェーン・ファイナンスへの応用が期待できます。
今回の実証実験をはじめとして、両社は、今後もブロックチェーン技術の実用化に向けた取り組みを重ね、金融サービスのグローバルな発展に貢献していきます。
*1ブロックチェーン技術:分散型台帳技術。複数拠点に分散されたサーバなどの通信機器に、それぞれ同一の記録を同期させて一つの台帳を維持する仕組み。
*2FinTech:Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語。最先端のITを駆使した革新的な金融サービスやそれらを創出するための活動。
(以下、省略)