融資統合システム

融資統合システムの概要

融資統合システムは、金融機関における様々な融資関連業務を統合的にサポートするシステムであり、融資稟議支援システム、決算書登録システム、信用格付・自己査定支援システムなどの様々な融資関連システムから構成されています。

第3次オンライン時代までの融資業務は勘定系システム中心で実現されることが多く、勘定系システムから出力される融資関連帳票を用いて、手作業かつ紙ベースで、稟議書作成や財務諸表管理、債権書類管理等を行っていました。

その後、金融商品の多様化、自己査定への対応、手作業事務の削減等に対応するために、個別業務単位で、信用格付・自己査定支援システム、決算書登録システム等のシステムが構築されてきました。

さらに、個別システムが増加するのに従い、勘定系システムや各システム間でのデータ連携が複雑となり、システム管理やデータの整合性確保が難しくなってきたことから、融資関連データを1つのデータベースに統合する動きが出てきています。

融資業務については、ABL(動産担保融資)や与信集中リスク管理、事業性評価に基づく融資など、新しい商品や考え方、制度等が継続的に出てきているため、融資統合システムも継続的な進化が求められています。

融資統合システムの概要図

以下に代表的な融資統合システムの概要図を示します。各金融機関により、システム構成は大きく異なります。
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融資統合システムの個別システム概要

融資統合システムは、様々な個別システムから構成されています。ここでは、幾つかのシステムについて、概要を説明します。

(1) 融資稟議支援システム

融資実行前の融資稟議(審査)業務について、稟議書やワークフローを電子化することにより、効率化を図るためのシステムです。融資統合データベースから、決算書データや格付情報、担保評価情報等を自動で取得するほか、営業店と本部間の審査についてもワークフローで実現するなど、効率的に稟議書を作成できるようになっています。

(2) 決算書登録システム

与信先企業から受領する決算書を勘定系システムや融資統合データベースに登録するためのシステムです。通常、各企業から受領する決算書は紙ベースで受領するため、当システムではOCR処理や勘定科目の判定・紐付け、勘定科目間の整合性チェック等を行います。また、各企業がe-Tax(国税電子申告・納税システム)へ送付した決算書データをについて、金融機関側にも企業から同一データを送信させるサービスもあります。

(3) 財務分析システム

与信先企業から受領する決算書データをもとに、企業の収益性分析や安全性分析等の定量分析を自動的に実施するシステムです。各業種・業態に応じた分析や、複数決算期の決算書をもとに、決算書の矛盾点や粉飾を見抜いてくれるシステムもあります。

(4) 信用情報照会・登録システム

個信センターやCIC、JICC等の個人信用情報センターと自社システムを接続し、個人信用情報の報告・照会を支援するシステムです。個人信用情報センターは、個人のローンやキャッシング、消費者金融借入等の与信に関する情報や延滞情報等を会員企業から収集し保有しています。

(5) 信用格付・自己査定支援システム

財務分析内容や定性情報、外部格付機関による格付等をもとに、各企業ごとの信用格付や債務者区分の判定を支援するほか、各営業店等における自己査定業務を支援するシステムです。判定された債務者区分ごとに債権の分類、償却・引当を行うほか、信用格付データを信用リスク管理システムへ送信し、信用リスク量の計量等を行います。

(6) 不動産担保評価システム

融資審査に必要となる不動産担保の評価や、路線価・公示地価等に応じた評価額の自動洗替等の業務を支援するシステムです。外部地図データと連携することにより、視覚的な画面で評価業務を支援するシステムもあります。

(7) 住宅ローン管理・審査システム

顧客との取引状況管理、土地・住宅担保評価、審査業務支援、徴求資料の管理、借換営業支援など、金融機関における住宅ローン関連業務を支援するシステムです。近年、金融機関間の住宅ローン獲得を巡る競争は激しさを増しており、住宅ローン関連の業務効率化は、各金融機関にとって重要な課題の1つとなっています。

(8) 債権書類管理システム

融資実行にあたって必要となる様々な債権書類(契約書、抵当権書類、担保書類等)について、本部または事務センターに集約した後、電子化やラベル付けを行い、入出庫作業・照会業務を効率化するシステムです。

(9) 債権管理・回収支援システム

各種債権の管理、延滞督促業務、代位弁済、回収・償却業務等の一連の債権・回収業務を支援するシステムです。

(10) 企業・信用情報

企業・信用情報は、企業信用情報調査機関等の外部機関が提供する、企業の財務情報や信用情報、倒産情報などです。与信先企業の調査や法人営業先の発掘等に利用されます。

(11) その他融資関連システム

これまで紹介した融資関連システムに含まれない、シンジケートローンシステムや電子債権システム、スペシャリティファイナンス支援システム等が存在しています。

製品・サービス一覧

融資統合システムの製品・サービス一覧は、以下のページを参照ください。

 

参考文献

参考文献一覧

参考文献一覧

  1. 金融情報システムセンター(2015)『金融情報システム白書〈平成27年版〉』財経詳報社 417pp
  2. 土屋清美(2013)『ITエンジニアのための金融知識』日経BP社 232pp
  3. 山本統一(2010)『SEが基礎から学ぶ金融システムの教科書』日本実業出版社 328pp
  4. 小泉保彦(2010)『SEのための金融入門―銀行業務の仕組みとリスク』金融財政事情研究会 300pp
  5. 克元亮(2004)『SEのための金融の基礎知識』日本能率協会マネジメントセンター 341pp
  6. 室勝(2010)『図解で学ぶSEのための銀行三大業務入門』金融財政事情研究会 438pp
  7. 深田建太郎(2010)『貸出金査定Q&A』銀行研修社 205pp
  8. 統合リスク管理研究会(2002)『銀行員のための統合リスク管理入門』金融財政事情研究会 157pp
  9. 調査部(2011)「地域金融機関における融資支援システム高度化への取組みについて」『金融情報システム』No.316(平成23年秋号) pp.62-87. 金融情報システムセンター
  10. 調査部(2010)「地域金融機関の融資業務とIT活用 ─ 「目利き」を支える情報取得・分析基盤 ─」『金融情報システム』No.309(平成22年夏号) pp.38-57. 金融情報システムセンター
  11. 調査部(2006)「地域金融機関におけるITの戦略的活用への取組みについて ~ITを活用した融資業務の効率化の取組み~」『金融情報システム』No.283(平成18年春号) pp.62-79. 金融情報システムセンター
  12. 株式会社 滋賀銀行システム部 調査役 高津知仁(2011)「〔第2回第2部〕滋賀銀行の基幹系システムと周辺システムについて」『金融情報システム』No.314(平成23年春号) pp.184-193. 金融情報システムセンター