ATM関連システム
ATM関連システム

ATM関連システム

ATM関連システムの概要

ATM関連システムは、ATMの動作監視や現金有高管理、ジャーナル集中保管などの機能で、ATMの効率かつ安全な運用を支援するシステム群です。

ATMの歴史は、1970年代初頭に都市銀行において、現金の引出と残高照会のみを扱うCD機(Cash Dispenser:現金自動支払機)の設置が開始されたのに端を発しており、1970年代後半から預金の預入等も可能なATM機(Automated Teller Machine:現金自動預払機)の設置が進められました。

その後、顧客利便性の向上や営業店事務の効率化を目的として、各金融機関とも積極的にATMの設置や機能拡充をを進めてきました。その結果、現在の金融機関事務においては、欠かすことができない重要チャネルとなっています。

現在のATMでは以下のとおり、様々な業務や機能が提供されるようになってきています。

主なATM業務や機能

普通預金、当座預金等

入金、残高照会、引出、振込、振込予約

定期預金、定期積金

新規開設、預入、即時解約、一部引出、解約予約

カードローン

申込、借入、随時返済、残高照会

キャッシング

キャッシング、キャッシング照会、返済

外貨預金

外貨預金振替、為替相場・金利照会

海外関連

海外発行カードによる現金引出サービス、海外送金

その他サービス

Pay-easy(ペイジー)料金払込、電子マネーチャージ、宝くじ購入

共通機能

通帳記帳、通帳繰越、暗証番号変更、変更利用停止(引出限度額の変更、他行ATMでの取引停止、デビットカード利用停止)

ATM機能

音声案内、生体認証対応、ICキャッシュカード対応、取引時メール送付、インターフォン、防犯用カメラ、多言語対応、ユニバーサルデザインフォント、セカンドディスプレイ、防犯用ミラー

一方で、ATMには多額の費用が掛かることが知られており、ATM1台の購入費用として数百万円、維持・運用費用としても、ネットワーク構築・維持・使用料、プログラム等の保守費用、設置場所費用、警備等委託費用など、合計すると毎月数十万円程度がかかると言われています。

このため各金融機関は、ハードウェアの共通化等による調達コストの削減、センタ一括管理システムの導入、アウトソーシングの活用(監視、コールセンター、現金装填など)、コンビニATMとの連携、個人・法人インターネットバンキングの普及促進など、ATMコスト削減に向けて様々な取組を進めています。

今後のATMの動向としては、海外発行カードによる現金引出サービスの充実など、ATMを重要チャネルとして、より一層の機能拡充を図る動きがある一方で、一部の主要行等で自行ATMを廃止しコンビニATMの活用を図る動きがあるなど、各金融機関のビジネス戦略に応じた、多様なATM戦略が図られていくと考えられます。

ATM関連システムの概要図

以下にATM関連システムの概要図を示します。各金融機関により、システム構成は大きく異なります。
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ATM関連システムの機能概要

ここではATM関連システム群の概要について説明します。

かつてATMは、各営業店において運用・保守作業(ジャーナルレシート交換、プログラム入替等)や現金装填作業を行っていましたが、現在ではセンター側から集中的に管理する形態に移行しています。

(1) ATM遠隔監視システム

営業店等に設置しているATMの稼働監視や顧客問合せ対応等を、センター側で一括して実施するためのシステムです。

ATM稼働監視ではATMの稼働状態の監視以外に、偽造キャッシュカードの利用監視等も行っています。また、ATM内の現金有高管理や防犯カメラ映像の監視などの機能を有する場合もあります。顧客問合せ対応としては、カードのくわえ込み対応、カード紛失対応(勘定系システムへの注意コード設定等)などの機能を有しています。

(2) ATM管理システム

各ATMの端末構成やプログラム管理など、センター側からATMを集中的に管理するためのシステムです。ATM遠隔監視システムが主に事務センターから利用するのに対し、ATM管理システムは主にシステム保守・運用部門が利用します。

具体的な機能としては、各ATMの端末構成や設定内容の管理、ジャーナル(ATMの取引ログ)のセンタ集中管理、プログラムのバージョン管理・配布、金融機関コードファイルの配布などの機能を有しています。

(3) WEB-ATMシステム

WEB-ATMとは、ATMの表示コンテンツやプログラムをWEBアプリケーションや共通的なミドルウェア等で構築することにより、ATM機種(ハードウェア)に依存しない統一的なATMを実現したシステムです。

通常のATMではATM機種ごとに異なるプログラムを開発する必要があるため、複数のATM機種を導入している場合、プログラム改修のたびに各ハードウェアに応じたプログラムを開発する必要がありました。

しかしながら、このWEB-ATMを活用することで、プログラム改修を1回のみに抑制することができ、顧客インターフェイスの統一や維持メンテナンス性の向上を図ることができます。

(4) ATMアウトソーシングサービス

ATMアウトソーシングサービスは、ATMの遠隔監視やプログラム入替等の保守・運用作業、現金装填や機械故障対応など、ATMに関する各種作業をアウトソーシング形式で提供するサービスです。

ATM稼働時間の拡大や営業店における事務負担の軽減、オペレーショナルリスクの削減等を目的に、近年ATMアウトソーシングサービスの活用事例が増えてきています。

製品・サービス一覧

ATM関連システムの製品・サービス一覧は、以下のページを参照ください。

 

参考文献

参考文献一覧

参考文献一覧

  1. 金融情報システムセンター(2015)『金融情報システム白書〈平成27年版〉』財経詳報社 417pp
  2. 尾籠裕之(2000)『e-ビジネス時代と保険システム』保険毎日新聞社 159pp
  3. 日本IBM金融インダストリーソリューション(2013)『2020年金融サービス―ITと融合するリテール金融の未来像』東洋経済新報社 221pp
  4. 谷守正行(著),小南俊一(監修)(2005)『BSCによる銀行経営革命―金融機関の価値創造フレームワーク』金融財政事情研究会 198pp
  5. 有浦義明(1998)『体験デリバティブ Excelでわかる市場・信用リスク管理』金融財政事情研究会 157pp
  6. 土屋清美(2013)『ITエンジニアのための金融知識』日経BP社 232pp
  7. 山本統一(2010)『SEが基礎から学ぶ金融システムの教科書』日本実業出版社 328pp
  8. 小泉保彦(2010)『SEのための金融入門―銀行業務の仕組みとリスク』金融財政事情研究会 300pp
  9. 克元亮(2004)『SEのための金融の基礎知識』日本能率協会マネジメントセンター 341pp
  10. 調査部(2014)「金融機関ATMの最新機能の動向について」『金融情報システム』No.333(平成26年夏号) pp.62-75. 金融情報システムセンター
  11. 調査部(2012)「金融機関 ATM のアウトソーシング動向等について」『金融情報システム』No.321(平成24年夏号) pp.48-61. 金融情報システムセンター
  12. マイナビニュース(2011)「大垣共立銀行、Web技術を導入したATM「Web-ATM」の取扱いを11月開始」<http://news.mynavi.jp/news/2011/10/11/026/>(2015/10/27 アクセス)
  13. 富士通フロンテック「ATMトータルアウトソーシングサービス」<http://www.fujitsu.com/jp/group/frontech/services/business/business-process-outsourcing/outsourcing/>(2015/10/27 アクセス)
  14. NTTデータ(2015)「ATM共同監視アウトソーシングサービスを提供開始」<>(2015/10/27 アクセス)
  15. 日本ATM「アウトソーシングサービス」<http://www.atmj-g.com/service/outsourcing/>(2015/10/27 アクセス)
  16. 日立オムロン「ATM関連」<http://www.hitachi-omron-ts.co.jp/products/atm/index.html>(2015/10/27 アクセス)
  17. 富士通フロンテック「自動機製品(ATM)」<http://www.fujitsu.com/jp/group/frontech/solutions/industry/financial/atm/>(2015/10/27 アクセス)
  18. 沖電気「自動化機器」<https://www.oki.com/jp/mechatro/products/atm/>(2015/10/27 アクセス)
  19. 株式会社 セブン銀行 取締役 常務執行役員 石黒和彦氏(2014)「セブン銀行のATM戦略とセキュリティ」<http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/data/rel141226a4.pdf>(2015/10/22 アクセス)