送金・決済

概要

NFC技術やモバイルPOSを使用したモバイル決済、ソーシャルネットワークID等を使用した個人間送金、サービスと連動した支払の自動化、オンライン決済の簡素化など、決済・送金手段の多様化や迅速化、簡素化、非中央集権化が進展しつつあります。

米国等における具体的な動向

(1) モバイル決済

すでに日本で普及しているNFC技術を使ったモバイルウォレットやモバイル決済が世界でも普及し始めています。これにより、現金ニーズの縮小やトランザクションデータの拡充などが見込まれます。

(2) モバイルPOS

これまでクレジットカードやデビットカード支払いには高価なPOS端末が必要でしたが、モバイル端末に差し込み可能な簡易なモバイルPOSが普及し始めています。

(3) P2P送金

銀行や中央集権型の送金ネットワークを経由しない、個人間送金・決済の流れが加速しています。ソーシャルネットワークIDを使用した決済や、中間者手数料を排除した国際送金サービスなどが出現しています。

(4) 支払自動化・M2M支払

サービスと連動した支払いの簡略化、自動化が進みつつあります。ETCのような行動・サービスと連動した自動決済が普及する可能性があります。

(5) 簡易オンライン決済

これまでオンライン決済(クレジットカード決済、デビットカード決済)を実施するには、Eコマース業者側は、専用のWEBシステムの開発やサービス開始後も高い決済手数料の支払いが必要でした。現在、簡易にオンライン決済を実装できるサービスや、安価な決済手数料を実現するサービスが普及し始めています。また、クレジットカードを保有していない顧客にも決済を提供できるサービスも出現しています。

 

今後想定される影響

決済・送金分野はFinTechの各分野の中で、最も先行している領域であり、今後とも決済・支払のモバイル化、簡素化、自動化、リアルタイム化、手数料の低廉化が進んでいくと考えられます。利用者にとっては、決済・送金手数料の低廉化が見込めるほか、さらなる利便性を享受できる可能性があります。

一方、銀行やクレジットカード会社にとっては、決済・送金手数料や加盟店からの利用手数料の収入が減少するリスクのほか、既存ネットワークを介さない決済ネットワークが登場するリスク、FinTech企業がトランザクションデータを独占するリスクなどが考えられます。

このほか、これらのサービスを使用した資金洗浄(マネーロンダリング)や違法送金の増加リスクなどのリスクも想定されます。

既存金融機関への示唆

2016年時点で、PayPalの普及やモバイルPOSの登場、LinePay等の簡易決済の登場など、日本においても決済・サービスは大きく変わりつつあります。預金取扱金融機関やクレジットカード会社は、これらのサービスが自社ビジネスに与えうる影響を分析した上で、自社戦略に反映させていく必要があります。

例えば、預金取扱金融機関では、FinTech企業と連携した決済・送金サービスの高度化を進める戦略(24時間365日決済・送金サービスや、クレジットカードを介さないダイレクトデビット機能など)、全銀新プラットフォーム等を活用してFinTech企業と同様のサービスを自社で提供し、顧客を囲い込む戦略などが考えられます。

また、クレジットカード会社では、FinTech企業と連携し自社カードを介した決済を拡大していく戦略、モバイルPOS等を活用して自社加盟店を拡大していく戦略、トランザクションデータを活用した与信の拡大といった新しいビジネスを構築していく戦略などが考えられます。