証券取引

概要

各金融機関がエンドツーエンドで対応していた各証券業務(データ入手・分析、リスク管理等)のアンバンドリング化やアウトソーシング化が進んでいるほか、HFT取引に加えてイベント駆動型取引が普及しつつあります。

米国等における具体的な動向

(1) レイヤー特化型アウトソーサー

トレーディング業務において、これまで各金融機関がエンドツーエンドで実施してきた各業務のアンバンドリング化が進みつつあります。各業務レイヤーに強みを持つFinTech企業が登場してきています。

(2) イベント駆動型自動取引

価格動向のみをもとにミリ秒単位で高速に取引を繰り返すHFT(High Frequency Trading)取引は欧米において縮小傾向(と言われている)となる一方で、ソーシャルデータやニュース情報を迅速に分析し即座に取引を実行する手法が普及しつつあります。

(3) 未公開株マーケット

未公開株など、これまで買い手と売り手のニーズを満たす市場が乏しかった商品等に対する市場が出現しつつあります。

 

今後想定される影響

レイヤー特化型サービスの普及により、既存金融機関はFinTechが提供する外部サービスを、どのように活用するかが差別化ポイントになる可能性があります。逆に、個人投資家や中小金融機関でも、外部サービスを活用すれば、大手金融機関等と同レベルのプロセスが実現できるようになる可能性があります。

また、イベント駆動型取引については、HFT取引のさらなる高度化・高速化をもたらす一方で、虚偽情報による価格操作リスクや、とあるイベントをキッカケとした価格乱高下が頻発するリスクがあります。

未公開株取引市場については、未公開株の流動性向上のほか、スタートアップ企業の資金調達手段やイグジット手段を多様化させるというメリットがある一方で、IPO件数の減少を招く恐れがあります。また、未公開株に関する不正や詐欺が増加するリスクも孕んでいます。

既存金融機関への示唆

2016年時点で、日本においてはトレーディング業務に関連する有力なFinTechが出現してきているとは言えない状況であるものの、既存のベンダ等がすでに様々なサービスやシステムを提供しているほか、欧米のFinTech技術・サービスも進出してきており、これらのサービスを活用できるか否かが差別化要因になりつつあります。

今後、各金融機関は技術動向やサービス動向を常にウォッチしながら、自社のプロセス見直しに活用していくことが求められます。

また、金融庁も2016年5月から金融審議会「市場ワーキンググループ」を開催しており、HFTを含むアルゴリズム取引に関する規制や、取引所外取引に関する規制について議論を開始しています。

このワーキンググループの議論の動向によっては、新たな規制制度が創設される可能性もあり、こちらも注視する必要があります。