日銀の中曽副総裁は5月12日、日銀本店で開催された「リテール決済カンファレンス」において、日銀自身がデジタル法定通貨を発行する可能性について調査分析を行っていく考えを示した。日銀がデジタル法定通貨について公式に発言したのは、初のことだと思われる。
デジタル法定通貨とは、日本銀行券(つまりは普段我々が使用している紙幣や硬貨のこと)を電子的な手段で提供すること。既存の電子マネー方式のほか、仮想通貨やブロックチェーン技術を活用する方式などが提言されている。
最近、イングランド銀行や中国人民銀行から、デジタル法定通貨の発行可能性に言及したレポートやプレスリリースが発表されている。それ以外の国では、韓国銀行やオランダ銀行でも調査・研究が行われており、日本銀行の動向が注目されていた。
中曽副総裁は冒頭の挨拶の中で、このような海外の中央銀行の動向に触れた上で、「現段階で日銀自身がデジタル通貨発行といった具体的なプランを持っている訳ではない」としながらも、「あらゆる可能性を排除せず、様々な調査分析に取り組んでいく」とした。
具体的には先月1日に設置した日銀内の「FinTech センター」において、調査分析を行っていくものと思われる。
中央銀行自身がデジタル法定通貨を発行することは、消費者が決済手段をシンプル化できるメリットのほか、税金の捕捉性の向上、金融政策の実行容易化、アンチマネロン対策など様々なメリットがあるとされる。
一方で、プライバシーやセキュリティの問題、既存決済事業者への影響、性能問題や決済機器等のコストなど、乗り越えるべきハードルも多い。
今後の日本銀行の調査研究結果に期待したい。
(参照)日本銀行のニュースリリース
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko160512a.pdf