P2P(ピアツーピア)融資最大手、米レンディングクラブのルノー・ラプランシェ最高経営責任者(CEO)が9日、社内の内部調査を受けて突然辞任した。このニュースを受けて、同社の株価は一時約25%も急落。同社の取締役会は外部専門家の協力を得て、機関投資家に対する不適切な貸出債権の売却について内部調査を実施していた。
内部調査結果によると同社は今年3月から4月にかけて、ある機関投資家に対し約22百万ドル(22億円)の貸出債権を売却したものの、当該機関投資家からの「明確な依頼」に反して、信用度の低い消費者向け債権を売却していた。さらに、3百万ドル(3億円)分の債権については、融資の申込み日を意図的に変更していた。
ラプランシェ元CEOが今回の「不適切な取引」にどのように関与したのかは明確ではない。しかしながら、同社取締役会は内部調査に対する同氏らの非協力的な態度を受けて、迅速かつ断固たる措置を取ったとしている。
P2P融資は近年、レンディングクラブを筆頭に劇的な成長を遂げてきた。現にレンディングクラブが同日に発表した2016年第1四半期における業績は好調だ。新規ローン組成額2,750百万ドル(2,750億円)は前年同期比で68%増加し、営業収益151百万ドル(151億円)も87%増加している。
一方でここ数ヶ月、マーケットの変調を受けてP2P融資に対する懐疑的な見方も日に日に強くなっている。同業のProsperは5月1週目に、業績不振を受けて28%の従業員をカットし経営陣を刷新することを明らかにした。また同じくOnDeckも株価を大きく下げている。
厳しい見方では、サブプライムローンなどの高リスク債権の引き受け先が、これまでの金融機関からP2P融資業者に変わっただけで、再び金融危機が来ればP2P融資業者は成り立たないとする声も多い。
本業に対する不信だけでなく、今回の事例を受けて社内コンプライアンスなどにも不信が広がりかねない。
今のところ、今回のレンディングクラブの「不適切な取引」は特定取引のみの事象とされている。しかしマーケットは他に問題が広がらないか懐疑的だ。レンディングクラブはFinTech企業の代表格の1社であり、その動向は影響が大きい。今後の推移を見守りたい。
(参照)Lending Clubのニュースリリース
http://ir.lendingclub.com/file.aspx?IID=4213397&FID=34233669