日本銀行は3月2日、金融システムレポート別冊シリーズの1つとして「ITの進歩がもたらす金融サービスの新たな可能性とサイバーセキュリティ」と題するレポート(全19頁)を公表しました。
当レポートは大きく2つの章から構成されています。「第1章 IT の進歩がもたらす金融サービス分野の新たな可能性」では、FinTechなどの金融サービス分野の新たな可能性と金融機関の課題がまとめられており、今後、金融機関の明確な戦略のもとでのIT活用、システム開発の力が競争力を左右する要素の一つになっていくとしています。
「第2章 サイバーセキュリティの重要性」では、サイバーセキュリティの動向のほか、金融システムの安定確保の観点からみた留意点などがまとめられており、特に体制面では経営陣の積極的な関与、サイバー攻撃を受けた後の迅速な影響範囲の特定・対応、幅広い情報の収集と共有が求められるとしています。
日本銀行は、当レポートに記載している認識のもと、IT技術やその金融面の活用について研究と情報発信を行うとともに、個別金融機関の実情に応じたIT戦略の策定やサイバーセキュリティの強化を促していくとのこと。
以下に、日本銀行のニュースリリースを引用します。
ITの進歩がもたらす金融サービスの新たな可能性とサイバーセキュリティ
日本銀行
2016年3月2日
近年、企業は、ITの進歩を積極的に活用することで、多様で変化の激しい顧客ニーズへの対応力を飛躍的に高めることが可能になっている。そうした働きの金融サービス分野における表れがFinTech(フィンテック)であり、伝統的な金融機関に該当しない担い手が、ITを活用して格段に高い利便性や大幅なコスト削減を実現しつつ、新たな付加価値を持つ金融サービスを提供している。
金融機関内および金融機関間でこれまで構築されてきたシステムは、精緻な機能設計と連動性の高さ、取引の安全性などに特徴があるが、上述の環境変化の中で、投資額の大きさや維持管理、変更作業の重さが意識されるようにもなっている。金融機関にも、ITの進歩を活用して、金融サービス分野で新たな付加価値を創出するチャンスがある。ただ、金融機関にとってのIT戦略は、FinTechの取り込みに限定されるものではなく、サービスの高度化、顧客との接点の拡充、マーケティング力の強化、業務プロセスやコスト構造の革新、顧客情報の能動的な分析・管理など、経営戦略と表裏一体をなすものである。明確な戦略のもとでのIT活用、システム開発の力が競争力を左右する要素の一つになっていくと考えられる。
また、IT活用にあたっては、インターネットを通じる取引の信頼性や安全性の確保、具体的には、サイバーセキュリティの確保が前提条件となる。サイバー攻撃の目的毎に異なる金融システムへの影響度合いや、「ネットワーク」と「外縁部」に着目した対応が重要である。体制面では、経営陣の積極的な関与、サイバー攻撃を受けた後の迅速な影響範囲の特定・対応、幅広い情報の収集と共有が求められる。
日本銀行は、以上の認識のもと、IT技術やその金融面の活用について研究と情報発信を行うとともに、個別金融機関の実情に応じたIT戦略の策定やサイバーセキュリティの強化を促していく。
(以下、省略)