融資・資金調達

概要

資金ニーズを有する個人・事業者と投資家を直接結びつけるマーケットプレイス融資や、オンライン上で直接資金調達を行うクラウドファンディング(スタートアップ型、プロジェクト型、ソーシャル型など)、取引データを使って迅速に与信判断を行うビッグデータ融資が出現しています。これらの新たな融資・資金調達の形態を総括して「オルタネイティブ融資」と呼ぶ場合もあります。

米国等における具体的な動向

(1) マーケットプレイス融資

資金ニーズを有する個人及び事業者と、より良い資金運用利率を求める投資家とを直接結びつけるマーケットプレイス融資が拡大しています。銀行等による仲介者の中抜きを排除することで、より低利な融資を実現しています。一部の銀行では、融資機会を求めてこれらのFinTechと連携する動きも見られます。

(2) クラウドファンディング

資金ニーズを有する個人・企業が、オンライン上で投資家から直接、資金調達を行うクラウドファンディングが普及しつつあります。投資対象ごとに、スタートアップ投資型、プロジェクト投資型、ソーシャル投資型などに分類することができます。銀行等における硬直的な融資基準に合致しない層を中心に、利用者が増加しています。

(3) ビッグデータレンディング

ビッグデータ技術を用いて、商流データやソーシャルデータ等を短時間で分析して、迅速な融資判断を行うサービスが出現しています。これまでのB/S、P/L重視の融資基準から外れる企業や、迅速な融資判断を望む層から支持を集めています。

(4) クレジットスコア

クレジットスコアと呼ばれる、個人に紐づいた信用情報が普及しています。クレジットスコアを活用した融資やサービスも普及するなど、個人にとって重要な指標となっています。

 

今後想定される影響

銀行等の既存金融機関からの資金調達が難しかった企業や個人だけでなく、これまで銀行から融資を受けていた層にとっても、資金調達手段が広がりつつあります。また、ビッグデータレンディングも、オンラインショップを中心に重要な資金調達手段になりつつあります。

一方、既存金融機関にとっては、中小企業や個人に対する融資機会が奪われてしまうリスクがあります。また、このようなFinTech企業が、PFMサービス企業やクラウド型会計サービス企業と連携した上で、中小企業や個人に対するビッグデータレンディングを強化していく可能性も指摘されています。

既存金融機関への示唆

2016年時点で日本においては歴史的な低金利が続いていることや各金融機関の融資姿勢が積極的なこともあり、マーケットプレイス融資やクラウドファンディングは、欧米ほど普及しているとは言えない状況です。しかしながら、日本でも様々なFinTechの融資サービスが登場し始めており、今後の経済情勢や既存金融機関の融資姿勢によっては、普及していく可能性があります。

このため、既存金融機関は、これらのサービスが自行の融資ビジネスにどのような影響を与えうるのか分析した上で、自行の戦略に反映させていくことが求められます。

例えば、これらのサービスと連携して新たな融資機会を追求していく戦略のほか、より付加価値の高い融資サービス(スタートアップ企業への事業性評価融資、事業継承支援融資、ABL、サプライチェーンファイナンス等)へ注力していく戦略、ビッグデータレンディングと同様の融資サービスを開始する戦略、あるいはコンサルティング能力の発揮や安心感への訴求などの差別化戦略が考えられます。