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個人向銀行・資産管理

概要

個人向けに、複数金融機関を跨ぐ資金を一元的に管理できるサービス(PFMサービス)や、デビットカード発行等の銀行関連業務を提供するバーチャルバンク(銀行代理業)、銀行とFinTechを接続する銀行APIを提供するサービスなどがあります。

米国等における具体的な動向

(1) PFMサービス

PFMは「Personal Financial Management」(個人資産管理サービス)の略です。複数の金融機関に跨るような資産状況や支出・収入状況を一元的に把握できるアカウントアグリゲーション機能のほか、より有利な金利、キャンペーン等をユーザに薦めるレコメンデーション機能などが提供されています。

(2) バーチャルバンク・Neoバンク

自社で銀行免許を持たずに、既存銀行とサービス提携を行い、契約ユーザに優れた金融サービスを提供するバーチャルバンク(銀行代理業)のほか、ソーシャルネットワークやネット系技術を活用して、先進的なサービスを提供する個人向け銀行が出現しています(モバイルバンク、Neoバンクとも)。これらの多くのバンクは、実際の営業店舗を保有せずにネット上だけでサービスを提供しています。

(3) 銀行API

PFMやバーチャルバンクを支える技術・サービスです。各銀行のシステムと接続するためのAPI(接続インターフェイス)を開発する企業やプロジェクトが出現しています。また、銀行側から積極的にAPIを公開して、自行サービスの高度化を促す動きも出てきています。英国では政府がFinTech振興策の一環として、銀行APIの公開を積極的に後押しする政策が検討されています。

 

今後想定される影響

これらの技術・サービスにより利用者側は、複数銀行口座の一元的な管理や、複数銀行を跨いだサービスなど、これまでに無かった便利なサービスを利用することができます。またセキュリティ面では、銀行APIによりFinTech企業にIDやログインパスワードを預ける必要が無くなることから、情報漏洩リスクの軽減に繋がることが期待されます。

一方、既存金融機関側にとっては、自行サービスの向上に活用できるメリットがある反面、最終的に自行口座が「単なるデータベース」として利用されてしまうリスクも指摘されています。

その他に、PFMサービス企業等が顧客情報や取引情報を一元的に把握できるようになることから、将来的に、ビッグデータ技術を活用した融資や資産運用サービスなどに進出してくる可能性も指摘されています。

既存金融機関への示唆

日本においてもPFMサービスや銀行APIが普及しつつあることから、預金取扱金融機関は、これらの技術・サービスの動向を注視し、自行ビジネスへの影響を分析した上で、自行のリテール戦略に反映させる必要があります。

例えば、PFMサービスや銀行APIなどのFinTech企業と積極的に連携して、他行に先駆けて自社サービスの高度化や新規顧客開拓に活用していく戦略のほか、自らPFM類似サービス等の提供を行い、サービス向上やリワード・ポイントの強化等により顧客を囲い込んでいく戦略などが考えられます。

いずれにしろ、「金融機関 vs FinTech企業」という枠組みで捉えるのではなく、自機関の強み・弱みや外部環境を分析した上で、「自機関として何を目指すか」「内製化する領域、外部と手を組む領域はどこか」「自機関が保有する独自データを如何にして強みに変えていくか」などを明確化していく必要があります。